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其の弐百参拾壱 イシダイのボート釣りが許せない!の巻…藤沢(相模川)
忘

なんとしてでも「釣りたい」とほざく輩と、立場上「釣らせなければならない」人と、「ボートでイシダイを狙うなんて邪道だ!」と息巻く人間と……陸の上のほうが、やたらとニギヤカだけど?
 

 東海道線の〈大船〉に、親の代から住む大河原氏は、勤務する会社の会長を兼務する本社の社長が藤沢に住んでる関係で、「ボートを運転してくれと頼まれて、免許を取ったよ」と話していたのだが…何度か一緒に飲んだりした際に、「ポイントへ着いたら仕掛けを落としてイシダイを釣って、顎の骨を標本にして飾るんだけど、こんなんでいいのかとときどき思っちゃうよ」と溜息交じりに漏らしたのだ。
 ちなみに、その広告制作会社はかつて店主も本社に四年余り在籍したから、よくわかるのだが……「仕事に差し障りがあっても拙いから、声をかけられると断れないんだけどさ」と大河原氏は自嘲気味に笑うが、「竿も仕掛けも社長のもので、アタリがきたら竿を差し出すという、なんかご主人様に遣える召使いみたいでさ」と、店主よりも十歳ほど年上で、人のいい大河原さんだからこそ社長も頼むのだろうが、なんとも切ない話でもある。
 その昔、アートディレクターとして勤務していた当時、一度だけ女房を連れて自宅を訪ねた際に、棚にいくつか並べられたイシダイの顎の骨を見た覚えがあった。
 イシダイの顎というのは、サザエやウニなどの殻をバリバリと食い破るだけの力を持つ、上下一対の骨で、なんとも頑丈なのである。
 しかも、たとえ魚拓がなくとも、その顎の大きさで魚体の大きさや何年くらい生きたか判定できるという、イシダイ師ならではの戦利品でもあるのだ。
 ちなみに、渋谷の宮増坂にあったおでん屋に持ち込まれた五十センチあまりで、四、五キロのイシダイを捌かされることになった際に、釣ってきた客が「あとで顎の骨だけもらえればいいから」と置いていったくらいなのだ。


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 くだんの社長の飾り棚の〈顎〉は、大きさからすればそれほどでもなく、せいぜい一、二キロと思われたのだが…どこで釣ったか一切明かすことなく、何本ものイシダイ竿やワイヤーの仕掛けを広げて見せたのだが…種明かしをすれば、こういうことだったかと呆れはしたものの、沢渡の怒りはそれどころではなかったのだ。
「魚さん、それって断じて許せないよね!」
 三宅島などへ竹芝桟橋から出る東海汽船で三年ほど通い、二、三百万からの大枚をはたいたバラしの連続で、結果はイシガキダイ数枚がという沢渡からすれば、〈幻の魚〉〈磯の王者〉と釣り師から呼ばれるイシダイを侮辱する行為にも等しいというわけである。
 だから、店主が浜野太洋などと一緒の船釣りで外道としてイシダイを二匹ほど上げたときも、「本音は逃がしてあげて欲しいんだけど」とその目が訴えていたものの、一キロほどあれば当然〈刺身〉と〈潮汁〉になるわけで、リリースなんてとんでもないというのが店主のポリシーだったのだから、これはお目こぼしいただくしかなかったのだが……「ところでの、社長の釣りの腕前のほどはどうだったの?」
 店主の興味はむしろそちらで、大河原氏は「なんといっても歳だし、足腰が弱ってるから自分で船が出せなくなったからだけど…あれこれ薀蓄やら講釈ばっかで、釣りよりなによりそっちのほうが煩くて」と……なるほど、いかにもあの社長らしい。


●イシダイ
日本各地にいるが西日本に多い。小笠原にも少ないがいる。外国では韓国、台湾。それとハワイ諸島のミッドウェイからの報告もあるが、これは無効分散(再生産できない)によるものとされる。
白地に7本の黒色横帯が入る縞々模様が入る特徴的な体色をしている。ただし,幼魚は白が黄色味がかることもある。老成魚では縞模様が不明瞭になり、一様に燻し銀のような色合いとなって口の周辺は黒くなる。両顎の歯は癒合しており、ウニや貝殻などを噛み砕いて食べられるほどに強力である。背鰭は11~12棘17~18軟条であり、イシガキダイ(12棘15~16軟条)とこの点でも見分けることができる。
甲殻類、棘皮動物、軟体動物、多毛類などを捕食する動物食性。釣り餌ではウニやイセエビ、トコブシなどの高級食材を使うことも多く、大人の釣りというイメージが定着している。
(出典=WEB魚図鑑「イシダイ」より抜粋)



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店主 魚畑耕海
(青山漁業狂動組合・横浜支部 調理長※)
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シングル・モルト・キタカタ フユカツ
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「単なる飲み仲間」と称する外野一同


  ※店主は、未だ調理師免許がないために〈料理長〉とは名乗れません。


其の弐百参拾壱  イシダイのボート釣りが許せない!の巻…藤沢(相模川)
by mitsu-akiw | 2010-02-12 21:44 | 本編<釣魚食善>
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